「後発酵茶」 後発酵茶(名)こう・はっこう•ちゃ❶茶の葉を摘採後、酸化発酵が生じないようにただちに加熱して葉に含まれる酵素を失活させ、揉捻(じゅうねん)などの工程を経た後に、微生物により発酵させて製する茶。中国茶ではプーアル茶、日本茶では碁石茶、阿波茶などがある。出典:講談社『飲み物がわかる辞典』よりお茶の世界には、ちょっと不思議な存在があります。それは、「後発酵茶」と呼ばれるお茶。一般的には、茶葉自身の酵素がはたらき酸化が進むことで風味が生まれますが、後発酵茶は微生物の力を借りて発酵させてつくる、食品としての“発酵”に近いお茶なんです。日本には富山のバタバタ茶、四国の石鎚黒茶・阿波晩茶・碁石茶の4種類しかありません。驚くのは、その発酵に関わる乳酸菌が「どこから来るのか」が未だ解明されていないこと。茶葉は蒸して殺菌し、道具も清潔に保たれているにもかかわらず、毎年決まった菌がきちんと働くのです。土地に根づく“地場の乳酸菌”の存在が指摘される一方、四国では「分からないものはだいたい空海のせいにされる」と言われることもあるそうで、発酵茶の謎にどこか愛嬌を添えています。爽やかな酸味と独特の香りをもつ後発酵茶は、科学と民俗のあいだを行き来するような存在。湧き上がる疑問を含めて、ひと口に小さなロマンが宿るお茶なのです。イラスト=葛原美晴