「氷出し」 氷出し(名)こおり・だし❶氷を茶葉の上にのせ、溶け出す水でゆっくりと成分を抽出する冷茶の淹れかた。お茶は、注ぐお湯の温度が高いほど、渋みや苦みが出やすくなります。では、温度を極限まで下げたらどうなるのか……。その問いに答えるのが、氷出しという淹れ方です。水出しよりも低い温度で、氷が溶けるスピードに合わせてゆっくりと茶葉へと浸透していく。効率とスピードが求められる現代において、その真逆の時間軸というのも魅力的です。急須に茶葉を入れ、その上にそっと氷をのせる。あとは時間に委ねるだけ。氷がゆっくりと溶け、0℃近くの水がじわりと茶葉に触れながら、一滴ずつ浸透していきます。低温で抽出されたお茶は渋みがほとんど現れず、旨味だけが静かに引き出されるのが特徴。量は驚くほど少ないですが、その一滴に茶葉の美味しさが凝縮されています。抽出にかかる時間は30分から1時間ほど。急かすことのできない、お茶との静かな対話です。できあがった一杯は、口に含むとふくよかな旨味がひろがります。大切な人との、特別な時間にそっと添えたい冷茶です。イラスト=葛原美晴