「和紅茶に、何が起きている?」- TOKYO TEA JOURNAL VOL.74 巻頭コラム
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TOKYO TEA JOURNALの巻頭コラムをご紹介。お茶のこと、うつわのこと、お茶菓子のこと。
私たちが企画した商品やよいと思った品に、向き合って、改めて見つめてみて思ったことや考えたことをお伝えします。
和紅茶に、何が起きている?

一杯の紅茶を口にしたとき、ふっと鼻に抜ける香りに心を掴まれることがある。甘く、華やかで、花咲く野に迷い込んだような感覚。そんな香りに出会ったことのある方なら、そのときの幸福感を思い出していただけるだろう。
日本の紅茶が、その香りを醸し出しはじめた。
和紅茶と呼ばれる国産紅茶は、近年著しく品質が向上し、繊細で奥行きある味わいの茶葉が増えてきた。品種や製法の工夫、各地の生産者の絶え間ない試行錯誤によって育まれてきた変化である。中でも特筆すべきなのは香りの進化。発酵や焙煎といった工程の中で、どんな香りが立ち上がるか。そこには自然がもたらす微細な変化が深く関わっている。
たとえば、ウンカは一般に害虫の類だが、茶においては益虫に変わる。ウンカが茶葉の汁を吸うことで甘くやわらかな香りが生まれることがある。こうした香りには、人の手だけではたどり着けない自然の力が宿っている。
同じように影響するのが土壌微生物。目に見えない存在ながら、植物に必須の養分を供給する重要なファクターで、香味の成分にも影響を与える。農薬や肥料を抑えた畑では、そうした働きがより自由に発揮されるという。
自然の力と人の技術が重なり合い、日本の紅茶は独自の香りを育んでいる。派手さはなくとも、ふと心に残るしっとりとした美しさがある。香りを追うことは、見えないものに耳を澄ますことに似ている。土の中の微生物、空気の湿度、葉をかすめる風、小さな虫の営み。すべてが香りの一部となり、一杯の紅茶に風景のような奥行きを与えてくれる。
和紅茶は、これからさらに美味しくなっていく。
その歩みは静かで、まっすぐだ。自然と語り合うようにして育まれる紅茶が、今、各地で育ちつつある。
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