作り手のことば「手に取った人に、少しでも幸せな気持ちになってもらえるものを作る」木工作家・蝶野秀紀さんインタビュー
Share
木工から漆塗りまで、漆器の作業工程をほぼ一人でこなすスタイルが特徴的な木工作家・蝶野秀紀さん。それぞれの木の表情を最大限に生かした、唯一無二の作品が人気を集めています。
今回、煎茶堂東京で蝶野さんの作品をお取り扱いするにあたり、蝶野さんのお人柄、作品や木工に対する想いなどを伺いました。

蝶野さん、今回はよろしくお願いします。まずは、簡単なプロフィールを教えていただけますか。
よろしくお願いします。私は、1971年に京都で生まれ、1997年に広島大学理学研究科物性学専攻を修了しました。その後、2001年に石川県挽物轆轤(ろくろ)技術研究所に入学し、2006年から、展示会やクラフトフェアへの参加を中心に活動しています。
2009年、現在の活動拠点である広島に移住しました。

木工作品を作ることになったきっかけを教えてください。
学生時代から器が好きで、全国各地の器を見て回っていました。そのうちに、漆や木製品の良さに惹かれていき、自分の手で作ってみたいと思うようになったのがきっかけです。
木工の工程と漆を塗る工程は、通常分業で行うことが多いと思います。これらの工程を一人でこなすことで得られるメリットや作用は、どのようなものだと感じていますか?
そもそも、漆器産業というのは、職人が各工程を分業して担当する家内制手工業の集合体です。
実は、この点は現代の工業製品に類似していると考えています。工業製品も異なるメーカーが作ったパーツを組み合わせて製造されるので、漆器産業における職人が機械に代替されただけとも言えるからです。

それゆえに、すべての工程を一貫して製作することの意味合いも工業製品と似ています。具体的には、大量生産は難しい代わりに、デザインやテクスチャまで多様な独自性を持たせることができます。これが、一貫して仕上げるスタイルの特徴であり、大きな魅力です。

蝶野さんは、作品づくりにおいてどの工程が好きですか?
仕上がった白木地(木工の工程が完了した、漆を塗る前の器)に、最初の漆を塗る工程です。この工程で訪れる劇的な変化が好きです。

今回、煎茶堂東京でお取り扱いする作品は、いずれも和紙貼りの仕上げが特徴です。蝶野さんの考える、和紙と漆器の組み合わせの魅力を教えてください。
同じ漆という素材を使っていても、私の場合は和紙のテクスチャをそのまま残して仕上げるので、通常の漆器とはまったく異なる作品に仕上がります。この違いが魅力の一つです。
しかも、一切の装飾を排除することにより、陶磁器やガラス、金属などの異なる素材と合わせたとき、引き立て役に徹するのも組み合わせの妙です。和紙のテクスチャを生かした、漆塗りの折敷や盆、トレーが裏方の主役と言わんばかりに活躍します。

ハレの日に使うものという印象も強い漆器ですが、蝶野さんは日常的に使える作品づくりをされています。ご自身の作品が「毎日使ってもらえる」よう、素材選びやデザイン面でこだわっているポイントがありましたら教えてください。
一時的に目立つことを主眼に置いた、奇抜なデザインをなるべく省くことです。
見ようによっては「ダサい」と言われるような、野暮ったい雰囲気をあえて持たせることで、何年たっても陳腐化することのない、長年飽きずに使い続けられる器になるのではないかと思っています。

作品を作るときのインプットはありますか?
人工物、自然物に関係なく、心の惹かれるものであれば、何でも参考にします。ただ、一番多く参考にしているのは、やはり世界各地の建物や、工芸に関する本の写真です。
蝶野さんが、作品を作る上で一番大事にしていることは何ですか?
見る人、手に取ってもらう人に、少しでも幸せな気持ちになってもらえるものを作ることです。
最後に、今後挑戦してみたいことがありましたらお聞かせください。
上記の延長線上で、見る人、手に取ってもらう人を幸せな気持ちにできるものであれば、器以外のオブジェなども作ってみたいです。












