春の彼岸は、おはぎ?ぼたもち? 呼び名の違いと「ぼたもちに合うお茶」
Share
春の彼岸が近づくと、店頭に並ぶ和菓子があります。あんこの甘い香り、手のひらに収まる丸いかたち。仏壇に供える人もいれば、台所で家族と分ける人もいるでしょう。その一方で、毎年のように小さな迷いも生まれます。
でもこれって、「おはぎ」?それとも「ぼたもち」? いつも迷ってしまう呼び名について、おさらいしていきます。
おはぎとぼたもち、違いはどこから?

よく知られているのは、季節の花の名前に由来する説です。春は大輪の牡丹(ぼたん)に見立てて「ぼたもち」、秋は野に咲く萩(はぎ)にちなんで「おはぎ」。同じ食べものでも、季節に合わせて呼び名が変わるというのは、なんだか日本らしい美意識があります。
ただ、実際には家庭や地域で呼び方が混ざることも多く、「春でもおはぎ」「秋でもぼたもち」という家も少なくありません。
呼び名が揺れるのは、どちらかが間違っているからではなく、暮らしの中で受け継がれてきた“それぞれの正しさ”があるから。彼岸の甘味は、きっとそのままでも十分においしいのです。
もうひとつ、粒あん・こしあんの違いで語られることもあります。

たとえば「秋は粒あん、春はこしあん」などの話。これも一つの目安としては面白いのですが、決め手になるほど厳密なルールではありません。むしろ大事なのは、あんこの質感と、もち米の粒立ち。
口に入れたときの“密度”がどんなふうに広がるかで、合うお茶の選び方が変わってきます。
「ぼたもちに合うお茶」ってどんなお茶?
ぼたもちに合うお茶、と聞くと「甘いものだから渋いお茶」と思いがちです。もちろんそれも正解のひとつ。でも実は、お茶の役割は大きく分けて3つあります。
1つ目は、甘さの輪郭をはっきりさせる“切る”役。渋みや香りで、あんこの甘さをすっと整えます。煎茶なら若々しい渋みが立つ淹れ方、和紅茶なら香りで余韻を引き締めるイメージ。
2つ目は、香ばしさで包み込む“受け止める”役。これは、ほうじ茶や玄米茶が得意です。粒あんの皮感、もち米の香り、きなこや胡麻の風味。そういった“香りの要素”が多いぼたもちほど、香ばしいお茶が頼もしく寄り添ってくれます。
3つ目は、口の中を軽くして次のひと口を迎える“整える”役。後味をすっきりさせる、いわば食後の余白づくりです。強すぎない煎茶や、穏やかな番茶系が向いています。

ここからは、タイプ別にもう少し具体的に。
・粒あん派:皮のニュアンスや香ばしさが立つので、ほうじ茶・玄米茶で“受け止める”のが好相性。甘さが重く感じにくくなります。
・こしあん派:なめらかな密度が魅力。中庸の煎茶や和紅茶で“切る”と、上品な余韻が残ります。
・きなこ・胡麻系:香りが主役になりやすいので、ほうじ茶で香ばしさを重ねるとまとまりが良くなります。
淹れ方で変わる、ぼたもち相性
同じ茶葉でも、淹れ方次第で印象は驚くほど変わります。ぼたもちに合わせるなら、「甘さを流す」より「甘さをほどく」方向へ。ポイントは温度と時間です。
煎茶で輪郭を出したいときは、少し高めの温度で短め(70℃程度/約1分)に。渋みが立ち、あんこの甘さがくっきりします。反対に、やさしく寄り添わせたいなら、低めの温度(60℃程度/約1分20秒)でゆっくり。旨みが増して、甘味のふくらみを受け止めてくれます。
ほうじ茶は、熱湯で香りを立てると良いバランスに。口に含んだ瞬間の香ばしさが、ぼたもちの“穀物感”とつながります。和紅茶なら、淹れたてを少しだけ落ち着かせてから飲むと、香りが丸くなり、甘い余韻と自然に重なります。
煎茶堂東京のおすすめ
呼び名は違っても、春彼岸の時間は同じ
おはぎでも、ぼたもちでも。呼び名の揺れは、そのまま暮らしの幅のようなものかもしれません。手を合わせる時間、季節を思い出す時間、家の中に静けさが戻る時間。そこに、合うお茶が一杯あるだけで、甘味は少しだけ立体的になります。
今年の春彼岸は、ぼたもちのそばに、あなたの“ちょうどいい一杯”を添えてみてください。甘さがほどけたあとに残る、春の余韻まで、ゆっくり味わえるはずです。











